榎 戸 材 木 店 ブ ロ グ

東京の新木場で、山武杉の低温乾燥材を取り扱っています。

#12_山武杉のブランド化

 前回、千葉県の木材市場にスギ丸太を仕入れに行く話を書きました。山武スギを銘木だと言う人もいますが、殆どの人は知りません。秋田スギや吉野スギのように全国に出荷されているわけではなく、ほぼ全量が千葉県内で消費され、県外に出回ることが少ないからです。

 山武スギは元々、強い風から農作物や家を守るための防風林として植えられたケースが多いため、手入れをして良材を育てようと言う意識は希薄でした。しかし、そのために今日まで太くなっても切られることなく残っている場合もあり、写真のような2メートルもある大径木の丸太が市に出展されることもあります。

 今では全国的にも珍しいほどの大径木は地元では値段が高過ぎて買っても採算が合わず、殆どは全国のスギの有名ブランドを抱える産地の業者がセリ落として行きます。その産地の優良材として売るのは産地偽装のように思われるかも知れませんが、山林に県境の線が引いてあるわけではないので、隣近所の県の丸太が市に出荷され、製材した産地の木として売られることは多々あります。

遠いか近いかの違いだけで、他県産の丸太を買って、製材した県の名で売ることは、木材業界ではよくあることなのです。

 記念市には太い良質な丸太が相当な数、出展されます。もし、山武スギを全国の有名産地の材同様にブランド化し高くても売れるようになれば、他県の業者の手に渡ることなく、千葉県の高級材として販売できるようになります。

 

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#11_スギ丸太を買いに

 3月20日、一旦会社に来た後、社員2人と共に千葉県の東金市にある木材市場に山武スギの丸太を買いに行きました。

 「買いに」と言っても必ず気に入った丸太があり、それが欲しい値段で買えるとは限らないのですが、2月の市が大雪で丸太が出て来ず、ほとんど中止に近い状況だったので、その分も含めて今回は良材が多数出品されるのではと期待し、見るだけ気分ではなく買う気で出掛けました。

 電話1本で製材工場から出来上がった製材品を買うのとは違い、丸太を買って賃挽きしてもらい製材品を作るというのは、木材の仕入れの原点のようなもので、当たり外れのリスクはあるものの、狙った良い製品が取れると材木屋冥利に尽きると感動します。特に山武スギはアテやミゾグサレ病、死に節などの欠点が多いため、当たり外れの差が大きいので、仕入れる際は緊張します。

 これからの時期は植物が根から水を活発に吸い始め、木を切るには適さない時期には入りますが、低温乾燥機、愛工房なら水分を多く含んだスギ板でも、それほど大差ない時間で乾燥させることが出来ます。ただし、木が活発に生長する時期は単に水分を多く含むだけではなく、細胞内にでんぷんやブドウ糖が作られるので、含水率を下げても腐り易さは残ります。内装材なら問題ありませんが、土台やウッドデッキなどのエクステリア材は、やはり「切り旬」を守った冬切りの丸太から取りたいものです。

 そのため、今回の市では5~6本の丸太を仕入れたかったのですが、残念ながら気に入った丸太が少なく、写真の2本しか買えませんでした。既に製材した在庫もあるので、しばらくは仕入れは様子見といったところです。

 

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#10_会社のトイレ

会社のトイレをリフォームし、自社で扱っている山武スギの床材、壁材を張りました。壁は天井まで張るとサウナのようになってしまうので腰高までにして、その上は化学物質を出さない健康壁紙にしました。もちろん羽目板は無塗装で、低温乾燥させた山武スギの油分だけで美しい艶が楽しめます。床のフローリングはさすがに国産の天然塗料を塗り、ある程度の撥水性を確保しました。

 床にスギを張ると土足でと言うわけにはいかないので、入るときいちいちスリッパに履き替えなくてはならないのが面倒ですが、年内には事務所内も山武スギのフローリングにする予定なので、そうすれば一般の住宅と同じ使い勝手になります。

 これだけの低温乾燥の内装材を張っただけでスギが吸収・分解してくれるのか、トイレ独特のアンモニア臭は全くありません。不自然な香りの市販の消臭剤のいらないトイレです。

 トイレの内装に無垢の木を張るのは贅沢だと思われるかも知れませんが、自然な室内環境が最も求められている空間がトイレなのかも知れません。

 

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#09_進歩した家

我が家は築32年。隣に建てた山武スギの家と比べるにつれ、住宅も着実に進化しているのだと、改めて思いました。今年の冬は一段と寒いですが、最新の家は高気密高断熱で、外の寒さがウソのようです。20坪弱の小さな平屋の家ですが、一旦室内が暖まると、ペレットストーブの火力を最小にしても十分温かいです。ペレットストーブの燃料代は灯油より安く、最小の火力なら1日に使用する量は5~6kg程度です。金額にすると300~400円です。

その点、我が家は薪ストーブをガンガン焚かないと暖かさが維持できません。今年の薪の消費量は例年の50%増しを越え、このままでは薪が足らなくなりそうです。薪は会社で出る端材を燃やしているのでタダですが、もし買うとなるとペレットの何倍もします。

また、我が家のリビング・ルームの掃き出し窓は断熱性能が低く、近づくと冷気を感じます。熱が逃げている証拠です。隣の新しい家は掃き出し窓に近づいても、全く寒さを感じません。吹き抜けの天井に取り付けられたファンがゆっくりと回転し、天井付近に溜まった暖かい空気は部屋全体に行き渡り、トイレや風呂場もドアを開けておけば家の中の温度差はなく、快適です。我が家のように薪ストーブのある部屋から出た途端、震えるような寒さを感じることはありません。住宅の進歩には驚かされます。

 

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#08_山武スギの家

 当社の主な取り扱い樹種である山武スギをふんだんに使用した「山武スギの家」が完成し、内覧会を行いました。建てて頂いた工務店の「材木屋が建てた、木にこだわった本物の自然住宅」とのホームページでの宣伝の効果か、埼玉県や横浜からも来場者が集まり、なんと1日で100名近い入場者数となりました。

 材木屋が建てた家ということで内装等に木を使い過ぎてクドイかなと思ったのですが、見に来られた方たちはさすがに自然住宅志向の方だけあって、これが良いんですよと感心していました。

 低温乾燥で有効成分を残した山武スギの羽目板は油分も強く、塗装しなくても艶があり、手垢も付かないくらいです。ですから香りも塗装の臭いではなく、スギそのものの香りがします。まさに本物の自然住宅です。

来場者は玄関から一歩、家の中に入った途端、足を止め深く息を吸います。それを見て、家の中で森林浴をしている感じでしょうと声を掛けると、皆、そうですねとうなづきます。家を建てる予定で毎週のように展示場を回っていると言う家族も、家の中の空気が他の家と全く違うと感心していました。

水は水道水が美味しくなければミネラルウォーターを買ってきて飲むことが出来ます。しかし、美味しく安全な空気はスーパーでもデパートでも売っていません。家を建てるとき使用する資材に気を使って、室内空気環境を作らなくてはなりません。当社が低温乾燥機を導入したのも、より自然で安心・安全な空気環境を実現するためです。

高くても健康に住み続けられる家を建てて頂きたいと、心から願っています。

 

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#07:柾目と板目

スギの特徴の1つに、目合いがハッキリしていることがあります。木目を楽しむのであれば、ヒノキやヒバより断然、スギがお勧めです。

ご存知の通り、木目には柾目と板目があり、使い道によって使い分けられます。樽や桶を作るには後から狂ったりすると、中に入れた水などが漏れてしまうので、柾目使いにします。

天井板や床のフローリング、壁などの羽目板は板目の方が木目を楽しめるので、その多くは板目使いです。この場合、加工する前にシッカリと乾燥させておかないと、後から縮んで隙間があいたり、反りなどの狂いが生じます。

昔の住宅の日本間の天井にはスギの板が使われることが多かったですが、木目を楽しむことの他に、無垢の板で巾の広いものを取るには板目の方が取り易かったこともあるのかも知れません。

高度経済成長期に大量の家が建てられるようになると、無垢の木材を内装などに使ったのでは供給が間に合わないこともあり、新建材やクロスが多用されるようになりました。

張った時が最も綺麗で、年月が経つほど汚れていく新建材や壁紙に比べ、無垢の木材は年月が経つと確かに日焼けはしてきますが、汚いという感じではなく味が出てくるのは、建ててから数十年、時には100年以上経った古民家や古い商店などの建物の内部を見て頂ければ御理解頂けると思います。

戦後植えたスギも50年、60年経ち、十分に使える太さになりました。柾目、板目を使い分けながら、無駄なく利用していきたいものです。

 

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